チェンバロを知っていますか?

チェンバロは、ピアノのような形をした「鍵盤楽器」です。でも、いろいろな意味でピアノとはずいぶん異なる楽器です。いったい、どんな点が異なっているのでしょうね。それは、これからおいおい解き明かしてゆくことにしましょう。

さて、鍵盤をもつ楽器は思いの外たくさんあります。順に挙げてみましょう。

まずあなたの家にもあるかも知れない「ピアノ」。「グランド・ピアノ」と呼ばれる大きいものと、簡易型の「アップライト・ピアノ」とがあります。ピアノは、大きなハープを楽器の中にこしらえ、鍵盤を押すことでこの弦を叩いて音を出す仕組みになっています。

次にオルガン。これには、コンサートホールや教会に設置してある建造物のように大規模な「パイプオルガン」、幼稚園や小さな教会でよく見る「足踏みオルガン」などがあります。オルガンは、空気の流れを使って音を出すので「気鳴楽器」に分類されます。この仲間には、アコーディオンや鍵盤ハーモニカ、普通のハーモニカなどがあります。
チェンバロは、これらの楽器と並んでよく知られた鍵盤楽器です。形は、グランド・ピアノを小型に、しかも華奢にした印象です。じつは、チェンバロの歴史はピアノよりずっと古く、まずチェンバロが先にあり、これによって鍵盤楽器のための音楽が大きく進歩しました。15世紀から16世紀半ばまでのバロックと呼ばれる時代です。
バロック時代は、様々な分野で豪華な装飾が発展した時代です。宮殿や教会の外装、内装、庭園、そして貴族たちのドレスのデザインは豪奢を極めました。それらの建造物にふさわしい楽器として、音色のみならず装飾の美しさをも競ったのがチェンバロの特徴となっています。

バロックから古典派、ロマン派と音楽の形態や演奏会場の規模が変わってゆくにつれ、大音量を出すことのできるピアノフォルテが考案されました。ピアノフォルテは、皆さんもご存じのとおり真っ黒か、まれに木目で作られる装飾のない楽器です。つまり、機能が優先されているということでしょう。

チェンバロには、ピアノとは異なる発音の仕組みがあります(チェンバロの仕組みのページで詳しく説明しています)。この仕組みだからこそ、チェンバロは独特の音色を持ち、優雅な音楽世界を繰り広げることができるのです。
この楽器のために書かれた音楽を再現するために、現代に至っても当時のままの発音の仕組みを踏襲し、その上、視覚的にもかつての装飾美を思い起こさせようとする楽器が「チェンバロ」なのです。
ヨーロッパで華麗な文化が花開いた時代の記憶を、後世まで大切に伝えてゆくために、今も各国で研究や試行錯誤が続けられています。チェンバロ工房の数は、世界中を探してもそんなに多くはありません。
しかし、その中のいくつかは私たちの住む日本にあります。
ここ、久保田チェンバロ工房もそのひとつです。